第22回日本分子生物学会年会
福岡ドーム
1999年12月10日
2P-0070
ポスター発表

マウスインプリント遺伝子ImpactとそのヒトホモログIMPACTの比較ゲノム構造解析
Comparative genome analysis of the imprinted mouse gene Impact with its human homolog IMPACT
 
岡村 浩司1, 萩原-竹内 百合子1, 大島 健志朗2, 服部 正平3, 榊 佳之1,3, 伊藤 隆司1
1東大・医科研・ヒトゲノム, 2日計サ, 3理研・ゲノム科学総合研究センター
 
【緒言】 哺乳類の遺伝子の少数は、いずれの親に由来するかで発現量が異なり、このような遺伝子はインプリント遺伝子と呼ばれる。 Impactは本研究室で開発されたAllelic Message Display法により発見された、父性発現するマウスの遺伝子である。 一方、そのヒトホモログIMPACTはインプリンティングを受けないことがわかっている。 今回、この発現様式の差異の原因を探る目的で両者のゲノム構造を決定し、比較解析を行った。
【方法】 それぞれのcDNA塩基配列を利用し、ゲノムライブラリーをPCR法によりスクリーニングした。 単離された細菌人工染色体のクローンをサブクローニングし、Nested Deletion法により塩基配列の決定を行った。
【結果】 塩基配列決定の結果、 マウスとヒト遺伝子はそれぞれ25kbと35kbにわたっており、ともに11のエクソンから成ることがわかった。 全てのスプライス部位はアミノ酸コード領域に含まれ、両者でほぼ一致している。 最も3'側のエクソンが約2.5kbで、他のエクソンと比べて非常に長いのが特徴的である。 インプリント遺伝子には一般にイントロンが少ないことが指摘されているが、Impactはこれに当てはまらない。 イントロンのサイズはヒトの方が全体的に長く、配列の相同性は全般に低いが両者で保存されている配列がいくつか見出された。 興味深いことに、ヒトでは第1エクソンを含む領域がCpGアイランドとなっているのに対して、マウスでは第1イントロン内にCpGアイランドが存在し、第1エクソンの上流域はむしろAT含量が高いことがわかった。 さらにマウスのCpGアイランドはインプリント遺伝子に特徴的なタンデムリピートを含むが、ヒトのCpGアイランドには見出されなかった。 このような構造の差異が両者の発現パターンの相違に影響している可能性が示唆された。