第35回日本分子生物学会年会
マリンメッセ福岡
2012年12月11日
1P-0595/1ST1-040 (1P-19-b 疾患生物学—病因解析・診断)
ポスター発表およびショートトーク

日本人集団に共通するコピー数多型
Identification of common copy number variations (CNV) in Japanese population
 
右田 王介1, 前原 佳代子1, 岡村 浩司1,2, 西濱 啓一郎3, 中林 一彦1, 秦 健一郎1
1成育医療セ・研・周産期病態, 2成育医療セ・研・システム発生・組織工学, 3イルミナ(株)
 
ゲノムには個体間で欠失、重複といったコピー数の多型が存在することが知られている。こうしたコピー数多型(CNV: Copy Number Variant)の多くは、生物の表現型に影響をあたえない。正常とされるヒトの個体間で、CNVのほうが一塩基多型(SNP: Single Nucleotide polymorphism)より多く数の塩基の違いを与えていることが明らかになっており、CNVはSNPと同様に、ヒト集団間や人種間で頻度の差があることも示唆されている。しかし、その一方、CNVはさまざまな疾患の病因にもなりうる。発現の量的な差異が生命の維持におおきな影響を及ぼす遺伝子群や、遺伝子の両親由来と発現とに関連があるゲノム・インプリンティング遺伝子群などは、CNVによって疾患が引き起こされる例が知られている。従って病因が未知である疾患の遺伝的因子を検索するにはCNVを考慮にいれることは大切である。我々は、正期産歴のある日本人女性412人にみられるCNVをSNPアレイIllumina HumanOmni 2.5-8 Bead arrayを用いて解析し、対象の5%以上で共通して存在した180のCNVを見出した。我々は、本研究でみられたCNVは、日本人一般集団に共通するCNVと考えている。また、すくなくとも対象の特性から生殖へ影響がすくないものと考えられ、観察したCNVは日本人集団で保存、維持されているCNVであったと考えている。発表では、CNVと遺伝子領域との関係、これまでの報告にあるCNVとの比較など、我々の見出したCNVの詳細を示す。今後の遺伝、ゲノム研究では各人口集団でのCNVのカタログや頻度情報が基盤のひとつとなる。日本人のCNVについては、各施設がもつデータを集積しデータベース化をするとともに、今後も進展するアレイ技術や次世代型シーケンサー技術にあわせた継続的な更新をつづける必要があると考えている。