第26回日本分子生物学会年会
神戸国際展示場
2003年12月10日
1PA-214
ポスター発表

ヒト11番染色体長腕、21番染色体長腕上CpGアイランドの網羅的アレル別メチル化解析
A comprehensive analysis of allelic methylation status of CpG islands on human chromosome 11q and 21q
 
白川 智代1, 山田 洋一2,3, 渡辺 日出海4, Todd D. Taylor5, 中山 綾1, 岡村 浩司1, 副島 英伸6, 向井 常博6, 榊 佳之1,5, 伊藤 隆司2,3,7
1東大・医科研, 2金沢大・がん研, 3科技団・BIRD, 4奈良先端大・情報科学, 5理研・ゲノム, 6佐大・医, 7東大・新領域
 
 従来、CpG island (CGI)は、哺乳類ゲノム中遺伝子の約半数に見出され、不活化X染色体上とインプリント遺伝子近傍を例外として正常組織中ではメチル化を免れる、とされてきた。しかし最近になって、正常組織中でもメチル化されている常染色体上のCGIの存在が指摘されるようになった。昨年の本大会で我々は、ヒト21番染色体長腕(21q)上のCGIのアレル別メチル化状態を、独自に考案したHpaII-McrBC PCR法を用いて網羅的に解析し、正常末梢血細胞中で両アレルともにメチル化を受けているCGIが予想外の高頻度(31/149)で観察されること、由来する親の性に依らない非インプリンティング型のアレル特異的メチル化を受ける部位が存在することを報告した。今回、CGIのアレル別メチル化状態に関する知見を更に拡げる目的で、21qとは対照的に遺伝子密度の高い11番染色体長腕(11q)上のCGIを同様の手法で解析した。現在までに全体の93%の解析が終了しており、非メチル化CGIの出現頻度が両染色体でほぼ等しい(11q 〜3.5 CGI/Mb : 21q 3.0 CGI/Mb)のに対して、21qにおけるメチル化CGIの出現頻度は11qのそれの約4倍を示すこと(11q 〜0.25 CGI/Mb : 21q 0.92 CGI/Mb)が判明している。以上より、正常細胞中でもメチル化を受けるCGIは、染色体によってその出現頻度が大きく異なることが示唆された。現在、メチル化CGIと縦列反復構造や染色体バンド構造との相関等に検討を加えると同時に、単アレル性メチル化を受けるCGIについても詳細な解析を進めている。