第27回日本分子生物学会年会
神戸国際展示場
2004年12月8日
1PA-262
ポスター発表

HM-PCR法による網羅的DNAメチル化解析
Comprehensive analysis of DNA methylation by HM-PCR
 
山田 洋一1, 白川 智代2, Todd D. Taylor3, 岡村 浩司4, 副島 英伸5, 向井 常博5, 榊 佳之3, 村本 健一郎1, 伊藤 隆司6
1金大・工, 2アークレイ(株), 3理研・GSC, 4トロント小児病院・遺伝, 5佐大・医, 6東大・新領域
 
 哺乳類遺伝子プロモーター領域の約半数にはCpG island (CGI)が存在する。CGIは通常メチル化から免れるが、例外的に不活性化X染色体上とインプリント遺伝子近傍のCGIはアレル特異的なメチル化(ASM)を示す、とされてきた。我々は、ゲノム配列情報に基づいて同定したCGIのメチル化状態をASMも含めて網羅的に解析するための基盤技術としてHpa II-McrBC PCR法 (HM-PCR)を開発した。我々は既にHM-PCRによるヒト21番染色体長腕CGIの正常末梢血細胞におけるアレル別メチル化の網羅的解析を報告したが、今回は11番染色体長腕上に位置する200 bp以上のCGIの全653個の解析を行った。その結果、CGIは通常メチル化を免れるという通説と異なり86個(13%)が両アレルとも完全なメチル化を、18個が不十分であるが両アレルメチル化を受けていることが分かった。またメチル化アレルと非メチル化アレルが混在する6例のうち1例は多型を利用して母由来アレルが特異的にメチル化されることが示され、HM-PCR解析の有効性が示された。
 これらの解析では、末梢血中の細胞種によるメチル化様式の違いが疑われ、分画した少数の細胞での解析が望まれる場合も少なくない。また解析対象を更に拡大するためにも、1アッセイに使用するゲノムDNA量を原法の200 ngから大幅に減らす必要がある。そこで我々は、制限酵素消化後にφ29DNAポリメラーゼによって100倍に増幅したゲノムDNAを調製し、これを1アッセイに200 ng用いてヒト21番染色体上の約100個のCGIをHM-PCR法により調べた。この結果、全例において未増幅ゲノムを用いた場合とメチル化パターンの一致を見た。この結果は、HM-PCRにおける全ゲノム前増幅の有効性を示している。現在、これを利用した微量細胞での解析の可能性を更に検討している。