第36回日本分子生物学会年会
神戸ポートピアホテル
2013年12月05日
3P-0015
ポスター発表

ヒトおよびアカゲザルのCpGアイランドプロモータ配列比較解析
Comparative analysis of CpG island promoters between the human and rhesus monkey genomes
 
伏見 麻由1, 由良 敬1,2, 岡村 浩司2,3
1お茶大・理・生物, 2お茶大・生命情報セ, 3成育医療セ・システム医学・組織工学
 
タンパク質をコードするヒト遺伝子のうち約半数がプロモータ領域にCpGアイランドをもつことが知られている。他の領域に存在する機能のよく分かっていないアイランドに対し、これらは転写開始点を中心にしてCpGおよびG+C含量が多い独特な分布を示 し、遺伝子発現制御において重要な役割を担っている。このCpGアイランドプロモー タは脊椎動物ゲノムに広く認められるが、種間の保存性は低く、例えばヒトとマウスを比べた場合でも配列だけでなく存在の有無さえ保存されていないことがある。そこでCpGアイランドプロモータの保存性、進化的な獲得および喪失等を調べるため、ヒトと配列がある程度異なっていると期待されるアカゲザルのゲノム配列を用いて比較解析を行った。RefSeqに登録されている遺伝子を対象にオルソログと考えられた5271遺伝子対について、登録配列の5'末端近傍をプロモータと仮定し、CpGアイランドプロモータの有無を推定したところ、2680対は両種に有り、1085対は両種に無し、1325対はヒトだけに、181対についてはサルだけに見つかった。1325対の多くはアカゲザルのゲノム配列の不完全さによるものと判断されたため、ヒトに見つからなかった181対を詳細に調べたところ、プロモータ領域の推定が間違っているだけであり、これらのうちの179対では、配列そのものはよく保存されていることが明らかとなった。CpGアイランドプロモータが見つからなかったヒトTBCEおよびNUDTについては、サルに対し複数のCpGサイトを含む短い領域の欠失があるためCpGアイランドの基準に満たないだけで、残りの配列は高い保存性を示すことが分かった。以上のことから、より正確なゲノム配列の決定、および両種における転写開始点のアノテーションにより、アカゲザルゲノムがCpGアイランドプロモータの1塩基レベルでの分子進化を探る理想的なモデルに成り得ることが示唆された。また、霊長類ゲノムにおけるAluを除くためにCpGアイランドの基準を高める研究報告もあるが、むしろより条件を緩めて解析をする必要があることが示唆された。