第36回日本分子生物学会年会 |
神戸ポートピアホテル |
2013年12月04日 |
2P-0024 |
ポスター発表 |
ヤツメウナギのミトコンドリアゲノム全配列決定および近縁種との比較解析 Complete genome sequence of the mitochondrial DNA of a river lamprey and comparative analysis among evolutionarily related species |
川井 優里1,5, 由良 敬1,2, 進導 みゆき3, 日下部 りえ4, 林 恵子5, 秦 健一郎5, 中林 一彦5, 岡村 浩司2,6 1お茶大・理・生物, 2お茶大・生命情報セ, 3京大・理・生物科学, 4神戸大・院・理, 5成育医療セ・周産期病態, 6成育医療セ・システム医学・組織工学 |
原索動物から脊椎動物へと進化した過程を探る上で、現存する無顎類の進化的位置は非常に興味深い。その代表種としてウミヤツメPetromyzon marinusのゲノム全塩基配列が決定され、この配列がリファレンスとして日本におけるカワヤツメLethenteron japonicumの研究にも用いられている。しかし、ウミヤツメとカワヤツメのゲノム配列がどの程度類似しているかはわかっていなかった。そこで本研究では、ウミヤツメとカワヤツメの塩基配列の差異を検証し、さらにはカワヤツメに特異的な配列を検出するため、de novoゲノムアセンブリによるゲノム全塩基配列の決定を行うこととした。その第一段階として、カワヤツメのミトコンドリアゲノムを決定し、これまでに報告されている近縁種のミトコンドリアゲノム配列と比較解析した。北海道で捕獲されたカワヤツメのオス一個体の精子からDNAを抽出し、次世代シークエンサを利用して4億7千万リードペアを取得した。一般的なリシークエンシングに対し、今回用いたde novoアセンブリはリファレンス配列を用いずゲノム配列を作り上げる手法で、挿入、欠失、構造変化や特定の系統における特異的な配列を見つけるためには不可欠である。ミトコンドリアを多く含む精子を用いたことにより16,272塩基対からなる環状ミトコンドリアゲノムの正確な全配列を決定することができた。ウミヤツメの37遺伝子は、カワヤツメのミトコンドリアゲノムでも順番と向きが保存されていた。2種のミトコンドリアゲノム全領域をアラインメントすることはできたが、一致率は90%と低く、どちらもヤツメウナギと呼ばれているとはいえ予想以上に配列多様性が見られた。今後は、核ゲノムの全塩基配列を決定する。これらの知見は、発生学や遺伝学、進化系統学など基礎的な生命科学分野から、水産利用などを含めた産業分野に多大に貢献することが期待される。
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