2017年度生命科学系学会合同年次大会 (第40回日本分子生物学会年会)
神戸国際展示場
2017年12月07日
2P-0563
ポスター発表

クロマチン高次構造に基づいた細胞系列特異的エンハンサーの探索
Exploring cell line-specific enhancers based on higher-order chromatin conformations

 
冨川 順子1, 高田 修治2, 岡村 浩司2, 阿久津 英憲3, 田中 智4, 秦 健一郎1, 中林 一彦1
1成育医療セ・周産期病態, 2成育医療セ・システム医学, 3成育医療セ・生殖医療, 4東大・院農・応用動物
 
あらゆる細胞の運命決定に際し、ゲノムに集約された遺伝情報がどのように取捨選択され機能発現にいたるのか、その本質ともいえるエピゲノム情報の取得は近年のゲノム解析技術の発展により格段に容易になった。その一方で、得られた膨大な配列データから実際にどのゲノム領域がどの遺伝子を標的とし、どのようにしてその転写を制御しているのか、その依存関係を見出すことは未だ難しい。 私達は、発生初期に胚体外系列細胞の分化に関わると考えられるTead4遺伝子のプロモーターと空間的に近接するゲノム領域をCircularized Chromosome Conformation Capture (4C) 法を用いて網羅的に探索した。マウス胚性幹 (ES) 細胞およびマウス栄養膜幹 (TS) 細胞で105カ所と64カ所のTead4プロモーター近接領域が同定され、さらに、これらの領域には3カ所および22カ所のオープンクロマチン領域が含まれていた。Tead4プロモーターは、二つの細胞間で異なるゲノム高次構造を構築していることが示唆された。合計25カ所のオープンクロマチン領域についてTead4プロモーターに対するエンハンサー活性をルシフェラーゼアッセイで検証し、TS細胞においてのみ強いエンハンサー活性を示す5つの領域を同定した。これらのTS 細胞特異的エンハンサーは初期発生過程における胚体外系列でのTead4強発現に関与する可能性が高いと考え、各領域を欠損したマウス系統をゲノム編集技術により樹立した。マウス5系統いずれにおいても胚盤胞の形成がみとめられたが、1系統においては胚盤胞におけるTead4発現の低下が観察された。Tead4遺伝子とこれら複数のエンハンサー部位との染色体間相互作用が胚体外系列の発生・分化においてどのような役割を果たすのか、さらなる解析を進めている。