第15回小型魚類研究会
名古屋大学野依記念学術交流館
2009年09月13日
17
口頭発表

筋肉ではたらくmicroRNAの機能と進化
 
日下部 りえ1,2, 谷 沙織1, 工樂 樹洋3, 成瀬 清4, 宮本 由紀5, 岡村 浩司6, 中井 謙太6, 日下部 岳広5, 井上 邦夫1
1神戸大院・理・生物, 2理研CDB, 3Dept. of Biol., Univ. of Konstanz, Germany, 4基生研, 5甲南大・理工・生物, 6東大・医科研
 
  microRNA (miR)は22塩基の短いRNA分子で、標的messenger RNAの非翻訳領域への結合により、翻訳抑制や分解促進を起こす。miRの多くは時間・空間特異的に発現し、さまざまな遺伝子の発現調節を担うことが、主にショウジョウバエ、線虫などにおいて解明されつつある。しかし、脊椎動物の各系統での機能性RNAの重複の度合いや機能の変遷については不明な点が多い。私達はメダカ、ヤツメウナギ、ホヤを用い、LNA修飾オリゴによるNorthernおよびin situハイブリダイゼーションを用いてmiRの発現パターンを詳細に調べ、胚発生過程における機能解析を行っている。
 筋肉発生では、筋肉特異的なmiR-1/206, miR-133が、骨格筋や心筋の分化や代謝調節、再生過程で機能する。これらのmiRは、哺乳類のゲノムに合計6個存在し、3つの染色体上に1対ずつのクラスターを形成し、一つながりの前駆体として転写される。
 私達は、3つのクラスター構造はメダカおよびフグで保存されていることを見いだした。またホヤではmiR-1/miR-133のクラスターの1つのみがゲノム中に存在し、ヤツメウナギには少なくとも2つのmiR-133が存在する。このことから脊椎動物の出現以前に獲得されたmiRクラスターが、脊椎動物の種分岐と共に重複したことがうかがえる。また、これらのmiRに対するモルフォリノオリゴをメダカ胚に顕微注入し、筋肉発生過程におけるmiRの機能に関する知見を得つつある。miRの発現や機能を魚類間および他の脊椎動物と比較し、miRの保守性や多様性の程度と脊椎動物の系統進化との関連に迫る。