日本人類遺伝学会第58回大会
江陽グランドホテル
2013年11月22日
P144
ポスター発表

日本人正常分娩集団に観察される遺伝的多様性
 
右田 王介1, 岡村 浩司2, 前原 佳代子1, 嘉村 浩美1, 中林 一彦1, 秦 健一郎1
1成育医療セ・周産期病態, 2成育医療セ・システム医学
 
【目的】染色体異常等をはじめとするヒトゲノムの量的異常が、不妊・不育・先天異常等の生殖発生の問題にかかわることは広く知られている。近年ヒトゲノムには、従来の細胞生物学的な手法で検出が困難な小さなサイズの欠失、重複といったコピー数多型(CNV: Copy Number Variant)が一塩基多型(SNP: Single Nucleotide Polymorphism)より多く存在することが明らかになった。このようなCNVの病的意義を確定するには、正常ヒト集団と比較検証することが極めて重要である。本研究では、ヒト発生異常にかかわる遺伝因子を検討するために、妊娠分娩経過に特に異常を認めなかった日本人女性のCNVを明らかにし、生殖発生に重篤な影響を与えないと推測されるゲノム異常(遺伝的多様性)を検証した。
【方法】妊娠分娩経過に異常を認めない日本人女性412人のDNAを収集した。稠密にプローブが配されたSNPアレイ(Illumina HumanOmni 2.5-8 Ver1.0)を用いて解析し、個々のゲノムにみられるCNVデータを収集した。さらに本解析法で比較的高頻度に検出されるCNVを検討した。
【成績】412人のアレイ・データをもとに、CnvPartition (Illumina社)とPennCNVの2つのソフトウェアで解析を行い、総数19,243のCNVを検出した。さらに詳細な解析を行い、ソフトウェア上の偽陽性を除き、他の定量法で再検証し、これまでのヒト一般集団中で報告のない新規CNVを見出した。
【結論】対象に共通して検出されるコピー数減少領域の遺伝子は、周産期の異常との関連が「低い」ことが予測された。さらに、本研究で定義したCNVは、対象の特性から生殖発生への影響が小さく日本人の一般集団で保存されていると考えられ、生殖医療・周産期医療にとどまらずさまざまな先天異常疾患の対照データとして有用であり、本邦の遺伝学的疾患研究の基盤的知見となる事が期待される。