第92回日本内分泌学会学術総会 |
仙台国際センター |
2019年05月09日 |
YIA5-1 |
口頭発表 |
新生児一過性糖尿病患者における多焦点性複雑ゲノム再編成の同定 Identification of complex multi-focal genomic rearrangements in patients with neonatal transient diabetes mellitus |
服部 淳1,2, 岡村 浩司1, 寺田 有美子1, 田中 里佳3, 福井 由宇子1, 松原 洋一1, 松原 圭子1, 鏡 雅代1, 堀川 玲子1, 深見 真紀1 1成育医療セ, 2東北大院・医, 3愛育病院 |
【背景】新生児一過性糖尿病の約70%が6q24関連糖尿病であり、さらにその約30%がPLAGL1を含む6q24領域の父性重複に起因する。6q24重複の多くは非対立アリル間相同組換えもしくは複製エラーによって起こると推測される。今回われわれは、新生児一過性糖尿病症例において上記の機序でで説明できない6q24父性重複を伴う複雑染色体構造異常を同定した。【症例】8か月男児。38週3日、体重 1,830 g (–3.2 SD)で出生した。日齢8から哺乳前の高血糖を認め、日齢40までインスリン治療を要した。ほかに、軽度運動発達遅滞と複数の先天奇形を認めた。【方法と結果】本症例の糖尿病発症機序とゲノム構造を明らかにするため、G分染法、マルチカラー蛍光in situハイブリダイゼーション、DNAメチル化解析、マイクロアレイによる比較ゲノムハイブリダイゼーション、マイクロサテライト解析、合成ロングリード全ゲノムシークエンス解析を行った。その結果、6番染色体長腕にPLAGL1を含む12 Mbの父性重複を認めた。さらに、2番染色体で二つの逆位と390 kbの欠失、13番染色体に1.2 Mbの欠失と14 Mbの重複、14番染色体で逆位、21番染色体で染色体崩壊とランダムな再編成からなる染色体構造異常を同定した。【考察】本症例の新生児一過性糖尿病は、6q24父性重複によって説明可能である。一方、本症例のゲノム再編成は、既報の非対立アリル間相同組換え、非相同末端結合、複製エラー、クロモスリプシス、copy number variant mutator phenotypeのいずれによっても説明できない。本研究の結果は、生殖細胞系列で起こる大規模なゲノム再編成の新たな発生機序を示唆する、世界で初の知見である。 |