第8回日本エピジェネティクス研究会年会
伊藤国際学術研究センター
2014年05月27日
P-34
ポスター発表

Hi-C法による細胞種特異的なクロマチン高次構造解析
Exploring the cell line-specific spatial chromatin organization via analysis of the Hi-C data

 
冨川 順子1, 前原 一満2, 岡村 浩司3, 林 恵子1, 阿久津 英憲4, 田中 智5, 大川 恭行2, 秦 健一郎1, 中林 一彦1
1成育医療セ・周産期病態, 2九大・医・エピジェネティクス分野, 3成育医療セ・システム医学, 4成育医療セ・生殖, 5東大・農・細胞生化学
 
 あらゆる細胞の運命決定に際しゲノムに集約された遺伝情報がどのように取捨選択され機能発現にいたるのか、その本質ともいえるエピゲノム情報の取得は近年のゲノム解析技術の発展により容易になったものの、得られた膨大な配列データから、実際にシスエレメントがどの遺伝子を標的とし、どのようにしてその転写を制御しているのか、その因果関係を見出すことは未だ難しい。さらに、ほ乳類細胞においては、細胞の分化段階に同調して発現する遺伝子群はゲノム上に散在していることから、これらの遺伝子群を時期特異的に一括して発現調節する高次のクロマチン構造制御システムが細胞内に存在することは間違いない。本研究では、マウス初期発生過程での最初の分化ともいえる胚体、胚体外系列への幹細胞分化をモデルとし、3C解析法の一種であるHi-C法を用いて両系列細胞間でのペア形成領域の差異をゲノムワイドに解析することにより、正常な発生に関わる新たな機能的ゲノム領域の同定、ひいては一群の遺伝子発現を集約して制御するクロマチン制御機構解析を試みた。胚体系列モデルとしてマウスES細胞、胚体外系列モデルとしてマウスTS細胞をそれぞれ用い、両細胞から作製したHi-Cライブラリーの配列情報から、両端がユニークにマウスゲノム上にマッピングされたものをペア形成領域として解析した。ES–TS間での遺伝子座集積状況の差異を比較検証した結果、局所的なクロマチン構造のみならず、大小さまざまなドメイン形成を介して染色体の大部分が異なった空間構造を呈していることが示唆された。現在、詳細な解析をFAIRE-seqならびにChIP-seqデータ分析と併せて進めており、その結果について報告する。