第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会 合同大会
パシフィコ横浜
2007年12月12日
2T5-10/3P-0695
口頭発表/ポスター発表

種特異的インプリント遺伝子Impactの齧歯目ゲノム比較解析
Characterization of the differentially methylated region of Glires-specific imprinted gene Impact
 
岡村 浩司1,2, Richard F. Wintle1, Stephen W. Scherer1,2
1Program in Genetics and Genome Biology, The Hospital for Sick Children, Canada, 2Department of Molecular and Medical Genetics, University of Toronto, Canada
 
これまで、既知のインプリント遺伝子のDNA配列を用いて、ゲノムインプリンティングに特徴的なモチーフなどを探し出す試みがなされてきた。特に、新規にDNAメチル化パターンを確立する際の標的となる配列の同定は、インンプリンティングだけでなく、発生やその後の組織特異的遺伝子発現制御、さらにはがんなど疾病の発生機序を考察する上できわめて重要である。それにも関わらず明確な特徴付けがなされていないのは、最近の多くの研究が示唆しているように、インプリンティングの分子機構が、個々の遺伝子によって異なっていることが一つの原因であると考えられる。そこで今回、齧歯目(ネズミ目)および重歯目(ウサギ目)特異的インプリンティングを受ける遺伝子Impactのみに注目し、卵形成時にメチル化を受ける第1イントロンの配列を、ビーバー、ヤマアラシ、リスなど約20種の齧歯目と重歯目で決定し、インプリンティングを受けない他の哺乳類ゲノムと比較することでシグナル配列を検索した。以前から関連が疑われているタンデムリピートは、マウス、ラット、およびモリネズミに見つかっただけで、その他の齧歯目や重歯目、さらには多くのネズミ科の動物にさえ見られなかった。重歯目の配列はむしろ、インプリンティングを受けない霊長目(サル目)や偶蹄目(ウシ目)など他の哺乳類とよく似ている一方で、一般に分子進化速度が速いと言われている齧歯目間の配列の保存性は観察されず、CpGアイランドが失われている種さえも存在することが明らかになった。そこで、そのようなレミングに加え、ワタオウサギ、ニホンザルについてDNAをバイサルファイト処理して調べたところ、インプリンティングを受けると考えられるレミングとワタオウサギにはやはりDMRが存在することが分かった。以上のことから、タンデムリピートに加え、CpGおよびG+C含量もアレル別メチル化の確立に関わっていないことが強く示唆された。