第37回日本分子生物学会年会
パシフィコ横浜
2014年11月27日
3P-0736
ポスター発表

ヒト老化細胞を利用したエピゲノム解析
A comparison of epigenome in human senescent cells

 
榊 みずほ1,2, 海老原 侑子1, 岡村 浩司1, 中林 一彦1, 秦 健一郎1, 小林 芳郎2, 前原 佳代子1
1成育医療セ・周産期病態, 2東邦大・院理・生物分子
 
 DNAやヒストンの化学修飾に代表されるエピジェネティック制御は、遺伝子の発現や染色体・ゲノム高次構造、発生、がんなどの疾患の発症に深く関わっている。細胞老化も、エピジェネティック制御を受けることが推察されるが、未だ不明な部分が多い。本研究では、複製老化、活性化がん遺伝子rasの導入によるストレス誘導老化、温度感受性SV40T抗原でトランスフォームした不死化細胞SVts8細胞を非許容温度下で速やかに老化を誘導するヒト細胞を老化のモデル系として用いることで、老化誘導の機構の違いを考慮しながら、老化特異的なエピゲノムの網羅的な解析を試みた。老化細胞とコントロール細胞(増殖細胞)から抽出したRNAあるいはゲノムDNAとマイクロアレイを用いて、ゲノムワイドな解析を行った。そして、それらの解析結果を統合解析することで、DNAメチル化制御を受けた遺伝子の検索を行った。異なる方法で誘導した老化細胞の遺伝子発現パターンを比較したところ、細胞増殖制御に必須の細胞周期やDNA複製や染色体分配に関わる遺伝子の発現パターンは共通しているが、非許容温度下で老化したSVts8細胞は、複製老化細胞とras誘導老化細胞とは、明らかに違ったパターンを示す遺伝子群が存在した。また、複製老化とras誘導老化の比較でも、若干違った遺伝子発現のパターンを示していることから、遺伝子発現へのエピジェネティック制御の影響に差があることが示唆される。DNAメチル化解析では、複製老化細胞ではDNAメチル化の変化を認めたが、ras誘導老化細胞や非許容温度下で老化を誘導したSVts8細胞では、DNAメチル化にほとんど変化が認められなかった。現在、DNAメチル化と遺伝子発現の統合解析を行っており、今回はその結果を踏まえて、異なる方法で老化を誘導したヒト細胞老化におけるDNAメチル化のエピジェネティック制御の関与を議論したい。