第39回日本分子生物学会年会
パシフィコ横浜
2016年12月01日
2P-0158
ポスター発表

ヒトおよびアカゲザルCpGアイランドプロモータの配列比較解析
Comparative analysis of CpG island promoters between the human and rhesus monkey genomes

 
青砥 早希1, 伏見 麻由2, 由良 敬2,3,4, 岡村 浩司5
1成育医療セ・メディカルゲノム, 2お茶大院・人間文化, 3お茶大・生命情報セ, 4遺伝研
5成育医療セ・システム医学
 
タンパク質をコードするヒト遺伝子のうち約半数が発現制御領域にCpGアイランドをもち、特にハウスキーピング遺伝子においてこの傾向が強く見られ、遺伝子発現制御において重要な役割を担っている。この領域は転写開始点を中心にCpGおよびGC含量が多い独特な配列を示し、脊椎動物ゲノムに広く認められるが、種間の保存性は予想に反して低いことが知られている。例えばヒトとマウスを比べた場合、配列だけでなく存在の有無さえ保存されていないことがある。そこで哺乳類CpGアイランドプロモータの配列保存性、進化的な獲得および喪失等を調べるため、最もよくアノテーションされているヒト、さらに遺伝子配列はほぼ同一であるが制御領域はある程度異なっていると期待されるアカゲザルのゲノム配列を取り上げ、哺乳類プロモータ配列の多様性を調べるモデルとした。RefSeqに登録されているサルcDNAの5'末端配列から転写開始点を推定したところ、対応するゲノム領域にInr配列は確認できなかった。そこでヒト転写開始点データベースであるDBTSSを用いて、ヒトの転写開始点を含む周辺塩基配列を取り出し、それらと配列類似性の高い領域をサルのプロモータ領域候補として取得した。これらの領域のヒトInrと対応する部位にはYRコンセンサスを確認することができ、この手法がサルのプロモータ領域を決める上できわめて有効であることが示された。推定されたサルのプロモータ領域を用いて配列比較を行ったところ、サルとヒトではCpGアイランドプロモータは比較的よく保存されており、その存在の有無に差は見られなかった。また、両種においてCpG含量の差が顕著なプロモータ領域について調べたところ、メチル化シトシンの脱アミノ化によると考えられる一塩基置換や、複数のCpGサイトを含む断片の挿入欠失が多く認められた。これらヒトとサルに見られた脱アミノ化や配列の挿入欠失は、霊長類に限らず広く哺乳類全般に見られるプロモータ配列の多様性に関わっている可能性が考えられた。